コレクティブハウスの暮らし大賞

第0回 コレクティブハウスの暮らし大賞

文章・エッセイ部門:002
「コレクティブハウスの子供たち」

 私がコレクティブハウスに住み始めたのは、2010年9月。当時結婚する予定の人と新居を探していた時、いつまでたっても物件を探してこない彼から「実はコレクティブハウスというのがあって、そこに住んでみたいんだ」と言われたことがきっかけである。なんだ、そんな住みたいところがあるなら早く言ってよ、という感じで何度も説明を受けるが全く訳が分からず、まずはオリエンテーション&ハウス訪問行ってきて、と巣鴨フラットにお邪魔し、次はコモンミールを食べに行ってきて、とコレクティブハウス聖蹟に繰り出し、最後に定例会参加してきて、と当日朝までカラオケで遊んでいたその足で聖蹟の定例会に顔を出し、「よくわからないけど、まぁ住んでみよう」と、ついに契約、引っ越しとなったわけである。

 それまで都内で一人暮らしをしていた自分にとって、コレクティブハウス聖蹟は当時0歳から70歳代と文字通り多世代の人々が暮らしており、今までの暮らしではまわりに子供がいなかったので、子供がいる暮らしが良くも悪くも新鮮であった。ミール中にテーブルの下で遊ぶ子、昼間に部屋で寝ていたら突然入ってきて寝ているベッドに飛び乗る子、とにかく驚きの連続であった。自分が子供を持つかもしれないとか、家族が増えるかもしれないということは特別思っていなかったけれど、2012年には長女が生まれ、2014年には長男、2016年には次男が生まれ、当初2人でワンルームに引っ越してきた我々は、子供が増えるたびにハウス内転居を繰り返し、現在4部屋目で5人暮らしをしている。

 2020年の合計特殊出生率は1.36であるが、そんな中3人も生み育てることができているのは、周りに子育ての先輩、人生の先輩方がいたことがとても大きかったと思う。もちろん初めての妊娠・出産・育児は悩みや不安もあったにはあったが、ふと隣を見れば子供を育てつつ仕事も頑張っている家族がいたり、年の近い子供たちがいることで、「あぁ、次はこんなかんじなのね」とわが子の成長もなんとなく先が予測できた。育児グッズや洋服をいただいたり、ミールやちょっと子供を見ていてほしいときに見てくれる居住者がいたり、そんなハウスならではの助け合いの元、今日まで何とか仕事もやりたいこともあきらめずに楽しく過ごすことができている。

 助けてくれるのは大人だけではない。そもそも長女のイヤイヤ期真っ盛りに、私と長女を救ってくれたのはお隣の小学生の女の子と、長女より1つ年下の保育園児の女の子であった。私がいくらあの手この手でなだめようとしても、収まるどころか益々火が付いてしまう娘を、「一緒にお風呂入ろ♪」とにっこりと手をつないで連れて行ってくれるのだ。6年ほど前の事だがいまだに思い出すし、2人の女の子には本当に感謝している。おおげさではなく、2人がいなかったら私の心はバキバキに折れていたと思う。あと2人も産まなかったかもしれない。親だけが何でも頑張らなければならないということはないと、新米母であった私に教えてくれたのはハウスの子供たちであった。

 子供も立派な居住者の一員で、コレクティブハウスにおいて何らかの役割を担っていると感じる。誰かにとっては癒しであり、誰かにとっては友達のような関係であり、誰かにとっては楽しみを共有できる関係であると思う。コレクティブハウスでの暮らしでは、居住者に色々な刺激をもらうことも多く、自分自身も仕事と育児をしながらも、短期留学・大学進学等にチャレンジしている。きっとこのハウスの子供たちも、親以外の大人たちから色々な刺激を受けて沢山の事を吸収し、チャレンジしていってくれるだろう。