新たな社会的住宅事例集

【case11】京都ソリデール

高齢者宅に若者が同居、京都府がマッチングを推進

自治体として初めて「異世代ホームシェア」を事業化したのが京都府だ。京都府建設交通部住宅課では、一年間の調査研究期間を経て、2016年度より「京都ソリデール事業」と名付けて高齢者と大学生のマッチング事業を開始。徐々に認知度が上がっており、2017年10月現在、7組の高齢者と大学生の同居が成立している。

【事業化の経緯】目的は「若者の定住化」異世代同居のマッチングシステムづくりをめざす

京都府の「京都ソリデール事業」は、自治体がリードする異世代ホームシェア事業として日本初の事例だ。きっかけは、地方創生戦略のアイデアを練るなかで抽出された、京都府ならではの発想だった。
京都は、学生が集まっているまちだ。京都府は大学生と短大生の人数が人口比で全国一だが、卒業すると多くが府外に出てしまう。特に大阪への流出が大きく、いかに京都のまちの魅力を知ってもらい、定着率を高めるかが重要な施策になると考えられた。学生時代を地域と関わらないワンルームマンションで過ごすのではなく、地元住人と共に生活することで京都に愛着感をもってもらい、将来の定住を促し、京都の未来につなげたいというのが「京都府地域創生戦略」におけるこの事業の位置づけとなっている。

事業化にむけて、まず初年度(2015年度)はフランスの「パリ・ソリデール」および日本国内のNPO等によるホームシェアの先行事例調査を行った。翌年2016年度から、運営団体を公募して、京都府南部で異世代同居マッチングを開始。また同居に必要なリフォームにかかる工事費用の補助制度も開始した。

【事業の特徴】さまざまなバックグラウンドの受託団体が「次世代型下宿」運営モデルを摸索中

2017年度の事業予算は1400万円。運営事業者の委託費等が500万円、リフォームへの補助金が900万円(1軒当たりの上限は90万円、補助率2分の1まで)という内訳となっている。補助金の対象は、大学生に提供する居室や間仕切り等の増改築費用、高齢者と大学生の交流のための居室の整備費用に使えるだけでなく、そのために必要となる家財の処分費用にも使える点が特徴だ。高齢者にとって、人に貸すためにはまず片付けなければならないということが、ネックとなる場合があることを考慮している。

高齢者と大学生の間のマッチングには、京都府から業務委託を受けた事業者が関わる。平成29年度は5つの団体が受託事業者となったが、留学生ハウス事業者やシェアハウス事業者、大学生中心の地域振興活動グループ、高齢者生協まで、さまざまなバックグラウンドをもつ受託団体が同時にソリデール事業を試みているという点が特徴的だ。それぞれ分野や強みを活かし、異なるアプローチをしてもらいながら早期に事業モデルを確立し、府の委託事業でなくなったのちも自立運営されることを目指したいと京都府では考えている。

2017年度の実績はまだまとめられていないが、2016年度に関して言えば、相談受付は高齢者世帯は11世帯、大学生の希望者は17人、11組に対して面会を実施。そのうち合意・同居に至ったのは4組。残りは、希望する性別や通学距離の問題、フィーリング等さまざまな理由で同居不成立となった。

ちなみに「希望する性別と違う」という不成立理由は、男子学生と女子学生のどちらが希望が多いという話ではなく、高齢者夫婦は自身の子育て経験から「実子と同性のほうが受け入れやすい」と答える傾向があるためだという。

「他人同士の同居・交流であるため、ていねいなマッチングを行っていくことがなによりも重要」と、京都府住宅課の椋平芳智氏(写真右)は話す。まずは認知度をアップさせ、応募者を拡大していくことを目指す考えだ。シンポジウムの開催や、学生の問い合わせが集中する1月からは相談会なども実施している。

【事業の結果】収益が目的でない、食事は提供してもしなくてもよい「次世代型下宿」を普及

以前は京都でもよく見られた「下宿」。かつてと違うのは、収益が目的ではないこと、同居のルールを相談すること、双方の合意までに交流会や訪問、数日間の「お試し同居」もあることなどだ。食事の提供もなくてよい(提供も可)。京都府では新しい住まい方として、定着を目指している。

同居者のプロフィールをひとつ揚げてみよう。ソリデール事業のマッチング成立第一号は、京都市北区の70代のM夫妻と19歳の男子大学生。彼は入学後、親の経済的負担を考えて奈良県の実家から片道1時間半かけて通学していたが、2016年秋に京都ソリデール事業が始まったことを知人から教えられ応募。2017年の年明けからM家で同居を開始した。家賃や生活のルールは事業として統一されたものはなく、当人の間で話し合って決める。Mさん宅の場合、家賃は月2万5000円。夕食は「2人分つくるのも3人分つくるのも一緒だから」とM夫人が用意、時間が合えば3人で一緒に夕食をとっているそうだ。自転車通学になった彼は「時間に余裕が生まれて勉強に集中できる。地域の人たちとも交流でき、新しい経験ができそう」と話す。また東京に一人息子がいるMさんも「孫と暮らしているようで楽しい」と話しているそうだ。

【今後の展開】ひとり親学生への追加支援や、農山村部への移住者促進にも活用したい

若者の定住化対策として始まった「京都ソリデール事業」、それが効果となって表れるのはまだ先のことだが、大学生の経済状況が厳しくなっているなかで負担を抑えて大学に通えたり、高齢者にとっては生活に張り合いや安心感が得られるなどといった、暮らしをシェアすることへのメリットはすぐさま実感として広がっているようだ。

2017年度からは、健康福祉部も相乗りするかたちで、ひとり親世帯の学生が京都ソリデール事業を利用する場合、下宿代の3分の1まで(上限2万円)を補助するという施策が始まった。
また、京都府が指定した移住促進特別区域において、地域住民が自宅の一部(いわゆる離れなど)を移住者に賃貸する場合、整備費の一部を支援するという「ホームシェア移住支援事業(農林水産部予算による)」も始まるなど、事業のバリエーションも生まれている。

京都ソリデール事業
運営者 京都府建設交通部住宅課
HP http://www.pref.kyoto.jp/jutaku/jisedaigeshuku_kyotosolidaire.html
facebookページ  次世代下宿「京都ソリデール」事業推進協議会