コレクティブハウスの暮らし大賞

第0回 コレクティブハウスの暮らし大賞

文章・エッセイ部門:001
「コレクティブハウスでの生活が子育てにもたらしたもの」

3年ほど前、嫁が「コレクティブハウスに住んでみたいんだけど・・・」と言ってきた。
なんでも、20世帯近くの家族や単身の人たちと一緒に、コモンミールという夕食作りを共にしたり、掃除や植栽管理、月に1度は定例会といった話し合いを通して、時間を一緒に過ごし、共に生活を作っていく暮らしだという。もちろん、最初聞いたときは、「えっ他人と一緒に食事すんの?月1回の話し合い?え〜なんで〜?」という感じだったけど、NPOコレクティブハウジング社で、日本にコレクティブハウスを作った経緯や、もともとスウェーデン発祥のコレクティブハウスでは、子育て世代が毎日夕食作り等に追われて、子供と一緒に向き合う時間がなかなか作れないので、週5回平日の夕食作りを分担するようなルールを居住者たちで作っている、なんて話を聞いて、「へぇ〜面白い仕組みだな〜、うちも子供が2歳だし、ちょっと面白いかも」なんて思い、ミールや定例会の見学を経て、コレクティブハウスに住むことになった。

住んでみてまず思ったのは・・・「コモンミール」という仕組みの秀逸さ。もちろん、平日にミールがあるのはとても有難い。いつもだったら、仕事終えて、保育園迎えにいって、夕食準備して、お風呂入れて、夕食食べて、寝かせ付けして、といったあわただしい時間の流れが、夕食準備が無いだけで、どれだけ心の余裕が出ることか・・・
でもミールの効果ってそれだけじゃなくて、一緒に料理を作ったり、食べたり、片づけたりの中で生まれるコミュニケーション。「おいしかったよ〜」「どうやって作るの?」「また作ってね〜」大人も子供も自然と生まれる会話。とりたてて、コミュニケーション上手な人でなくても、ちゃんとコミュニケーションが生まれる仕組み。よくできているな〜と感心したのを覚えている。

 あと嬉しかったのは、子供も楽しめるイベントが沢山あること。毎年恒例になっている「お花見」「流しそうめん」「クリスマスパーティー」「お餅つき」等等・・・今年はハロウィンも一緒にやった。全部ハウスの大人の手作り企画なので、流しそうめん用の竹を取りにいって、持ち帰って半分に割って、削って、組み立てて、そうめん流し台を手作りで作ったり、結構準備も大変なんだけど、「今年も本当にやるの?面倒くさいけどな〜」なんて言いながら、皆で集まって、あーでもない、こーでもない、と言いながら手作りで作っていく作業はなんか楽しい。

 あとはやっぱり、なんだかんだ大変な子育て。一人で孤独にならず、それを愚痴ったり、相談したりする相手がいることのありがたさ。「あ〜今の時期夜泣き大変だよね、夕ご飯の間だけ抱いてようか?」とか、「H君一緒にお風呂入れとくよ〜」「うちの場合、●●はこういう風に対応してたな〜」とか、そんなご近所との関係があるのは、物理的にだけでなく精神的にもとても有難いな〜と思う。

 そんなハウスで暮らすこと3年弱、5歳となった息子は、保育園から帰ってくると、そのままハウスの子供たちと一緒に遊びまくり、ハウスの大人たちとも物怖じせずお話しできる、というか、勝手に家にピンポンしてお邪魔してお菓子もらってたりして・・・「全然帰ってこないな〜、そろそろ夕飯だから探しにいかなきゃ」とハウス中の家を一軒一軒探しにいくという・・・やんちゃで、好奇心旺盛な、男の子に育っている。きっと昔の村社会では当たり前だった「地域の皆で子供を育てる」ということが、現代社会ではなくなりつつあるけど、コレクティブハウスは、それを新しい形でそれを実現しているのだと思う。
※コロナ禍で現在は、月1定例会をZOOMで行ったり、ケアしながら暮らしています。